今回は魚たちの少し変わった特殊な習性についての解説です。
こういった習性も初心者の方が知識として持っておくと、今後の釣行に良い方向につながるものと思います。
海川釣り双方に面白い習性の魚がいますよ!
では、順番に見てゆきましょう。
初心者必見!海川釣り 魚たちの環境順応

自然の中で生きている魚たちは、一般的に程度の差はありますが、保護色を持っています。
保護色の意味合いには2種類ある様です。
1つはエサの捕食の際に気付かれにくくする為。
例を見てみましょう。
海洋の食物連鎖では上位である大型魚食魚、マグロやカツオ。
体の背側は海の色に似せた紫藍色。
体の腹側は天空を背景にした銀白色。
これによりエサとなる小魚の群れに気付かれにくくなりますね。
もう1つは、逆に捕食者に気付かれにくくする為。
例えば、岩場に比べて隠れ場所が少ない砂地。
砂地にいる多くの食われる側の魚たちは、体色変化によって背景に色を合わせて目立たない様に生活してます。
つまり、砂地にいる魚の多くは砂と同じ様な体色なんですね。
ハゼなどがそうですが、カレイやヒラメは砂地の体色変化の代表格ですね。

ヒラメの場合は、捕食者としての体色変化ですね。
カレイやヒラメについて、もう少し見てゆきましょう。
カレイとヒラメは、短時間のうちに体色を海底の砂の色や模様に似せる事ができます。
よくある実験で、カレイやヒラメを白く塗った水槽に入れると淡い体色になり、斑紋も消えます。
次に底の色や模様を変えた水槽に移すと、5分程度で体色が変化を始めて、ついには背景と同色になり見分けが付きにくくなります。
もう1つよくある実験で、面白い検証があります。
水槽の底を白黒2色にします。
そこにカレイやヒラメを入れるとどうなるでしょうか?
目の周辺が白いと体は黒い底の上にあっても体色は白くなります。
逆に目の周辺を黒にすると、やはり体は白い底の上にあっても体色は黒くなります。
つまり、周辺の状況を視覚で認識しているという事ですね。
深海のアンコウも海底の砂や磯に体色を似せて身を隠して、頭上の綿状棘を揺り動かせて小魚を誘う事で有名ですよね。
初心者必見!海川釣り 魚たちの変わった習性

魚の環境変化による順応の1つに、オスがメスにメスがオスに自らを変化させるというものがあります。
・オスからメスへ変化する魚 クロダイ、コチ類など。
・メスからオスへ変化する魚 ハタ類、キダイ、ベラ類、タウナギなど。
クロダイを例に見てみましょう。
クロダイは成長の過程で雌雄が変化する魚として有名です。
幼魚時代は、正常なオス機能を持つのはオスだけです。
生後1年経ち、体長10㎝位になると体内にメス機能が出現する。
2才魚となり、体長15~25㎝位になるとメス機能が発達します。
そして、オス、メスの両機能を有する雌雄同体となります。
この状態は、3才魚~4才魚位まで続く。
体長30㎝以上になると、オス、メスどちらかの機能が発達するか減退するかして、完全なオス、メスとなります。
なお、産卵期にはどういう行動になるのでしょうか?
雌雄同体のものと雌雄異体となったオスによりオス機能が使用される。
対してメス機能を使用して産卵するのは、雌雄異体となった完全なメスのみです。
クロダイ全体を見ると、若い頃はオスが多く、3才魚以上ではメスのほうが多いそうです。
次にハナダイの例を見てみましょう。
ハナダイは外見から雌雄の判別が可能だそうです。
大型のオスはサンゴ礁上部にナワバリをつくり、幼魚とメスは大きな群れをつくります。
そして、オスがいなくなるとメスがオスに変化してゆくのです。
そのハナダイを使った面白い実験報告を紹介します。
・水槽に20尾のメス、1~2尾のオスを入れる。
・この状態が維持されると何の変化も起きない。
・オスを取り除くと、2週間後1尾のメスがオスの体色に変化し、行動もオスの様になった。
・さらに、このオスに変化した個体を取り除く。
・すると、残りの19尾の中から1尾が同じくオスに変化する。
・これを繰り返すと、全てのメスがオスになるそうです。
しかし、取り除いたオスを別の水槽に入れて横に並べて置くとどうなるでしょうか?
その場合、メスのオスへの変化は一切見られなかったそうです。
同じ観察をベラの一種でも行った例があります。
同じ様にオスを取り除くと、1番大きいメスがオスに変化する。
この魚種だと、オスがいなくなり1日で行動がオスらしくなり、2~4日で完全に外見がオスになるそうです。
魚の泳ぎ方は、その体型によって主に5種類あります。
・体を左右に屈伸させて前進するタイプ タイなど。
・尾ビレの振動によって前進するタイプ カツオ、マグロなど。
・主に胸ビレの運動により前進するタイプ エイなど。
・背ビレと尻ビレの働きによるタイプ カワハギなど。
・長い体を左右にくねらせて前進するタイプ ウナギなど。
それぞれのタイプで共通している点は、腹側を下にして背を上にして泳ぐ事です。
1部の魚種は、上記の各タイプとは異なった泳ぎ方をするものがいます。
尾を下に頭を上にして泳ぐ事がある魚。
いわゆる立って泳ぐ魚ですね。
有名なのはタチウオです。
あと、メバルも時期によって立って泳ぐ魚として知られています。
メバルは晩秋の頃に立って泳ぐ事が多いです。
これは、交尾の為の行動なんですね。
さらに例外的ではありますが、変わっていると言えばトビウオは危険が迫ると空中を飛行します。
トビハゼは干潟の上を飛び跳ねます。
海外では、腹側を上に背を下にして泳ぐナマズの一種もいるそうです。
胎生とは?
一般的に魚は、卵を産みその後で受精します。
胎生魚は母体の体内でふ化し仔魚になってから産むのですね。
主にサメ類やエイ類に多く見られますね。
大きく2つのタイプに別れます。
胎生魚
母体に胎盤がある。
仔魚は母胎内で発育し、ある程度の大きさになってから産み出される。
卵胎生魚
母体に胎盤が無い。
卵の発生、ふ化、仔魚の発育は母体内で行われる。
一部、卵の状態で産む魚もいますが、この場合の卵は母体内ですでに受精してます。

サメ、エイ類の卵は栄養分となる卵黄が多い為非常に大きいです。
中でも大きいものは直径10㎝もあります。
身近な釣りの対象魚の中にも胎生魚はいます。
カサゴ、メバル、ウミタナゴです。
・カサゴ
オス、メス共に3年で成熟します。
交尾期は10~11月頃。
オスの方が成熟が早い。
交尾期ではありますが、メスの方はまだ体が受精状態ではありません。
メスの状態が整い次第そのまま体内で受精します。
仔魚は冬から早春にかけて産み出されます。
この時期には、腹の大きな個体が釣れる事があります。
卵やふ化した仔魚が腹に詰まっているんですね。
・メバル
カサゴとほぼ同じ、冬から早春にかけて仔魚を産みます。
抱卵数は2年魚で5千~9千、高年魚では8万~9万。
かなりの数ですよね。
なので、仔魚は数回にわたって産み出されます。
・ウミタナゴ
仔魚は5~6月頃産み出されます。
母体内で5~7㎝まで成長するんですね。
これは、親魚の3分の1程度の大きさです。
その分、産み出される仔魚は20~30尾と少なめです。
擬態は保護色の強化版ともいうべきものですね。
保護色のところでも解説しましたが、擬態についてもその意味合いは2タイプです。
・捕食するために正体を隠す。
・捕食されない様にカモフラージュする。
保護色に関しては、多くの魚種がもっています。
しかし、擬態となるとかなり特殊な魚種が多いです。
特に後者の場合はあまり釣りの対象にはならない魚種が多いので、ここでは省略しますね。
前者の方で身近な釣りの対象魚としては、カサゴですね。
カサゴは大きな頭に大きな目、大きな口を持ち小魚を捕食する。
岩礁部に棲み、岩盤の根元や岩礁の凹んだ薄暗いところで周りの景色に溶け込み潜んでいます。
そうして口の近くに小魚がくると一気にのみこんでしまいます。
魚も一日の行動の中で、休む時間がある様です。
人間における睡眠ですかね。
その休み方が特殊な魚がいるので、ここで紹介しますね。
・マグロ、カツオ、イワシなどの回遊する魚は常に泳いでいるので、眠る時も泳ぎながら寝るそうです。
・アオブダイは粘液を出して体にまとい、寝袋の様にして休みます。
・ベラは砂や砂利に潜り布団の様にして、まさに体を横にして休みます。(この行動は外敵に追われた際にも行うそうです。)
一般的に定着性の強い魚種はナワバリを持つ傾向にあるようです。
海では磯に棲むベラなどですね。
しかし、ナワバリを持つ魚の代表はやはりアユではないでしょうか。
ナワバリを持つ習性を利用して、友釣りの様な独特であり専門的な釣り方がある位ですからね。
ということで、ここではアユのナワバリ習性について解説してゆきます。
とはいえ、アユの全てがナワバリを持つわけではありません。
なので、アユ全体の行動とナワバリを持つもの、持たないものそれぞれ見てゆきましょう。
アユの基本行動
アユの行動は、生育してゆくに従って変化してゆきます。
まず最初に、アユの卵は川底に産みつけられます。
その後、ふ化した仔魚は夕方になると浮上して川を下ります。
海から川へ遡上する頃
夜明けから2時間程してから遡り始める。
正午から2時間でピークを迎えます。
夕方になると、遡上する魚数は極端に減ってくる。
薄暗くなって以降は遡らなくなります。
定着期頃
夜明けと同時にエサを食べ始める。
1日中少しずつ食べ続けます。
特に明け方と夕方は食欲旺盛になりますね。
これは、朝マズメ、夕マズメに活性が上がる他の魚種と同じですね。
ナワバリを持つアユは1日中ナワバリ内で食べます。
ナワバリを持たない群れアユは淵と瀬を往復し、特に明け方と夕方には移動が激しい。
夜間はナワバリを持つアユは、ナワバリの近くの流れがゆるいところで休む。
群れアユは淵やゆるい流れのところで休みます。
なお、ナワバリを持たないアユの中には移動せずに淵のみで生活する個体もいます。
成熟した頃
定着していた川の中流域から下り産卵水域へ移動します。
産卵活動は日没前後から活発になる。
産卵場は平瀬のカ作られることが多い。
雄は産卵場に1日中姿が見られる。
雌は日中深みに入り、産卵場には出てこない。
夕方になると、雄も雌も動き出す。
この時、雄の体色に変化があり婚姻色がいちじるしく鮮明になります。
産卵のピークは、日没後数時間。
河川によっては、明け方にも小さなピークがあらわれる事もあるようです。
アユのナワバリ
春に河口に集まった稚アユは上流方向へ遡上する。
中流域にたどり着くと定着してナワバリを持ち始める。
一般的に、1尾のナワバリの広さは1㎡と言われています。
時々周辺に泳ぎだす個体もおり、その場合の行動範囲は2~3㎡だそうです。
このナワバリに近づく魚は同じアユでも他の魚種でも猛烈に攻撃されます。
ナワバリアユの特徴
・ナワバリ習性を利用して釣る友釣りに掛かるアユは、他の釣り方や漁法で掛かるものよりも明らかに大型です。
・場所との結びつきが極めて強い。
・ナワバリアユが釣られていなくなると、ナワバリにつけずにいた別のアユがそのナワバリにつき、これが繰り返される。
水槽での実証観察
・水槽内で1番大きな個体がナワバリを持つ。
・例外的に、体は小さくても活発に動く個体がナワバリを持つ事もある。
・ナワバリを持たない個体には順位が存在している。
・もっぱら、ナワバリを侵そうとするのは順位が1位の個体である。
・ナワバリを持つアユを取り除くと、順位が1位のアユがそのナワバリを持つようになる。
・以降、ナワバリアユを取り除く度に、順位2位、3位と順番にナワバリを持つ様になります。

実際の河川においても、この構図が拡大、複雑化された状態が展開されているのでしょうね。
当然ですが、河川内のナワバリとなる面積には限りがあります。
年によって遡上する個体数も変わるでしょうから、それはそのまま競争率になるわけですね。
まとめ

今回は魚たちの様々な特殊な習性について解説しました。
いかがでしたでしょうか?
魚たちの様々な特殊な習性は、綿々と引き継がれる生きてゆく為の知恵のようなものを感じますね!
では、今回はここまでです。
失礼します。